2015年 03月 04日
パンクロッカー時代の話など、町田節炸裂(爆裂)のエッセー集。 いろんな雑誌などで書いた文章を集めたもののようだ。 「旅行とはなにか」という文章がある。 ・・・人跡未踏の秘境やいったん迷い込んだら生きては出られない魔窟に行っても「秘境も飽きたなあ」と嘯く人もあるからである。というと日光や箱根に驚愕している人より、秘境で倦怠している人のほうが旅慣れていて格好よい人のように聴こえるが逆である。 というのは、なぜその人が倦怠するのかと言うと、これまでどんな新奇・珍奇なものに触れても、当人の中身がまったく更新・アップデートされず、ただただ、新奇・珍奇を消費、すなわち、そのものを使って虚しくしてきただけであったからである。 これを、登山に当てはめても、ははんと思われる節がないこともない。 山行の成否は当人の中身のアップデートにかかっている・・・と言い切るのは、一面過ぎるとは思うが。 感心したのは、筆者は幼少時代から読書の虫であって、気に入った本は何十回も読むことがざらであるらしいこと。 本人は先人を手本にするようなことは潔しとせず、まったく新奇の小説を作ろうとしたと言っているが、この読書経験が糠床のようなものであり、彼の文章にいろんな味を浸みこませているのだと思う。 わしの場合、1回読んだらあとは本棚に並べておくだけ。 二度読むのは、読んだことを忘れてしまってまた購入するという事故のときだけである。 これも、1回登ったルートは2回目登らないのと同じかも(特に自分で開拓したルート)。 町田康著 2008年 角川春樹事務所
by s_space_s
| 2015-03-04 17:28
| 読書
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