blog版 がおろ亭

sspaces.exblog.jp
ブログトップ
2009年 11月 20日

せきれい

最近、外へ出ることが多くなり、ゆっくり読書する時間がなかったので、読み終わるのにかなりかかりました。
「せきれい」は、今年9月に亡くなった庄野潤三の1998年の小説。
老夫婦の静かな生活を淡々と描いた日記のような作品です。

事件らしいことはなにも起こらないし、同じような出来事が数日おきに何回も書いてあったりして、日記を推敲してそのまま小説にしたような感じでした。
うちの息子は、これはフィクションで事実を書いているのではないと言いますが、もしそうだとして頭の中でこんな世界が構築できたらすごく斬新なスタイルとも言えます。
あとがきで庄野自身がこの小説に描かれる夫のことを「主人公」と言っているので、やはりこれは日記ではないということなのでしょう。

たぶん庄野潤三のファンはこれを日記として読んでいるのではないかしら。
どちらにせよ、読者はこの小説の世界に浸ればよいわけです。
庄野の初期の小説ではもっと暗い悲しいことが夫婦に起こるわけですが、たぶんこの老夫婦にも若い頃にはいろんなことがあったはず。
最後には許しあって静かに終っていく、こういう人生も悪くないと思います。

妻の方はかなりのーてんきで無邪気な人のようで、こんなお婆ちゃんなら、みんなに可愛がられるはず。
夫のほうは小説のなかでもやはり小説家。
野鳥に好き嫌いがあるのが、この人らしいと思いました。
好きなのはシジュウカラ、メジロ、ツグミ。嫌いなのはヒヨドリ、ムクドリ、カラス、鳥じゃないけどネコ。
歩くこと、ハーモニカを吹くこと、あと酒が大好きということで、わしもこんな爺ちゃんになれるよう頑張ります。

ひとつ心に残ったのが、日が暮れて玄関の電灯を点けたちょうどそのときに、外出していた妻が帰ってきたので「うれしい」というところ。
なんでもないようなことが、すとんと腑に落ちるように描かれていて、すごいと思いました。

文春文庫
[PR]

by s_space_s | 2009-11-20 08:31 | 読書 | Comments(0)


<< The mountains a...      第6回川と山のぎふ自然体験活動... >>