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2010年 08月 05日

火を熾す

村上春樹の短編にも出てくるジャック・ロンドンの短編「火を熾す」。
「人の命は何物よりも重い」などという建前の話は厳しいアラスカの自然のなかではなんの意味もない。
人間も自然の掟の例外ではないのだ。

テーマに違いがあっても各短編で書きたいことは明解。
これはアメリカの菊池寛ですな。

火を熾す    To Build a Fire
メキシコ人   The Mexican
水の子     The Water Baby
生の掟     The Law of Life
影と閃光    The Shadow and the Flash
戦争       War
一枚のステーキ   A Piece of Steak
世界が若かったとき When the World Was Young
生への執着      Love of Life

「戦争」などは、まさに、菊池寛の「形」を彷彿させる。
「火を熾す」や「生の掟」などの冷徹な人間の運命は、その状況こそ違うが「三浦右衛門の最後」と通じるものを感じた。
ただ、「生の掟」の老人は死を受け入れていることが違う点。

「影と閃光」「世界が若かったとき」は幻想文学全集にでも収録されそうな作品で、ロンドンの守備範囲の広さがわかる選曲。

「メキシコ人」や「一枚のステーキ」はボクサーを題材にしており、感情を抑えた語り口などヘミングウェイとも共通点があるようだ。
この3者を年代で並べてみると・・・

ジャック・ロンドン 1876年1月12日 - 1916年11月22日
ヘミングウェイ 1899年7月21日 - 1961年7月2日
菊池寛 1888年(明治21年)12月26日 - 1948年(昭和23年)3月6日年

ヘミングウェイはロンドンの小説を読んで育ったそうなので、同じ匂いがするのはあたり前か?
両方とも肉体的に優れ、最後は自殺した点も同じ。

ロンドンからヘミングウェイまでたった20年ちょっとしか経っていない。
ロンドンと菊池の小説は、昔話として面白いと思うだけなのに、ヘミングウェイの小説には同時代人として共感できるのは何故だろう。

柴田元幸翻訳。
この人の訳文は好きです。

by s_space_s | 2010-08-05 13:03 | 読書 | Comments(0)


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