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2014年 04月 11日

赤目四十八滝心中未遂

ちょっと前に車谷長吉の「灘の男」を読んだ。
これは、実在の人物を聞き書きというスタイルで描いたものだった。
けど、車屋長吉と言えば私小説、それもどん底の生活を描いたものが世に認められた最初だという。
たまたま本屋で見かけた直木賞受賞のこの初期の作品を読んでみた。

凄い小説である。
理性では説明できない情動や言葉の霊的な力が、びんびん伝わってきて、物語の世界に引き込まれてしまった。
「中流の生活」への嫌悪から、会社を辞め、尼崎のアパートの一室で病死した動物の肉を捌き串を作り続けることになった生島。
「ピアノの上にシクラメンの花が飾ってあって、毛のふさふさした犬がいる贋物西洋生活。ゴルフ。テニス。洋食。音楽。自家用車。虫酸が走る。」
生島はたぶん頭でそのようなことを考えているのだ。
なので、アヤちゃん(在日朝鮮人)始め、どん底に生きる人々とは、結局、同化できない生島。
アヤちゃんもその旦那の彫師「彫眉」さんもセイ子ねえさんもそういう生活がいいと思ってそうしているのでない。
どうあがいてもそうするしかないから、そうなっているだけなのだ。

アヤちゃんと生島は、心中するために赤目四十八滝へ向かう。
二人のやり取りの緊張感と、ものを食ったりしてふっと緩んだりする心の機微の描写がみごとである。
4年後、尼崎のアパートを訪ねた生島を拒絶するようなエピローグが印象的だった。

車谷長吉著 文春文庫




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by s_space_s | 2014-04-11 21:47 | 読書 | Comments(0)


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