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2018年 07月 24日

日和田の馬大尽の話

父は昭和7年(1932年)飛騨の久々野の生まれ。
その父から、若いころ日和田の馬大尽の家を訪問した話を聞いたことがあり、興味を持った。
父母を連れて下呂温泉へ行く機会があり、足を延ばして久々野で墓参りした後、日和田の旧原家邸宅跡を訪ねた。

江戸時代から木曽馬の大馬主として栄えた原家は、明治の最盛期には馬小作も含めると3,000頭もの馬を所有していたという。
馬は主に木曽福島の馬市に出されたが、戦前には久々野にも馬市が立ち、子馬を預かる農家もあった。
軍馬として木曽駒が重用されなくなったのと農村不況をきっかけに、原家は斜陽となり、莫大な借金を抱えて昭和7年に破産した。

現在では、宝来門と倒れかけの塀しか残っていない。
保存されていれば開田高原の山下家住宅を凌ぐような豪邸だったと思われる。

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右手には石碑と石垣の上に並べられた石仏
多分、塀が倒れて石垣だけ残ったところへ、後日、周辺の石仏を集めたのであろう。
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馬に乗った大日如来
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左手の正門(檜作りの立派なものだが、陰になり写らず。)
塀の角には電気メーター。生活の名残。
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凝った造りの庇を見ても、金に糸目をつけず建てられたものだと分かる。

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宝来門の裏には庭園の名残がある。
正門の奥には、建物が残存。
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集落内(下村)の祭場の石仏
中央の大きいレリーフ状の石仏の彫りが素晴らしかった。
左が愛宕大神、右が秋葉大神。
明治20年とあるので原家が全盛期のころ、仏師を呼んで掘らせたものか。
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以下、道中で父から聞いた、戦前の久々野の馬市や、没落後に訪れた原家の様子をメモする。

(久々野の馬市)
・父母が少年のころなので昭和10年代であろう、久々野には年2回馬市が立った。
・売買されるのは木曽馬であった。
・市には馬を運ぶ馬喰やそれを買う商人が集まり、大変な賑わいで出店も出た。
・母は普段1銭の小遣いであったが、馬市では5銭もらって出店を回るのが楽しみだった。
・茹でた串のこんにゃくを八丁味噌の壺につけた、味噌おでんがうまかった。(飛騨ではおでんに味噌はつけない)
・男の子供は、馬喰から飼料にする草刈りを頼まれ、小遣い稼ぎをした。
・馬喰は馬の尻尾と「くつわ」をひもで繋いで、数頭を連結して運んだ。
・馬喰は腰に札束を挟んで、羽振りがよかった。
・父の家では組み立て式の厩を持っていて、庭には土台があり、市の期間だけ厩を立て馬を預かった。
・馬喰は家の座敷に泊めて金をとった。
・子馬を預かるときは、厩の床を深く掘り下げて、そこに子馬を入れる。(馬小作)
・飼料を投げ入れ、馬は糞をして床を踏み固め、どんどん穴が浅くなってくる。
・子馬を出すころには、床が逆に高くなっていた。

当時、既に原家は破産していた筈だが、まだ馬の売買は盛んであったようだ。

(原家訪問)
・父が裁判所に就職して間もないころというので、昭和27年ごろの話か。
・同僚と日和田に行く機会があり、村の顔役的な者の口利きで原家を訪問。
・家には兄妹が二人で暮らしており、妹が父と同僚を案内した。妹は30代に見えた。
・まだ広大な屋敷は現存しており、傘天井などを見学した。素晴らしい細工だったという。
・屋敷の土台はすべて大きな御影石であった。
・没落した富豪へのやっかみか、この兄妹のことを「にわとり夫婦」と陰口を言う者もいた(意味は不明)。
・木曽馬がだめになり、競走馬の飼育にも手を出したが、借金を増やすだけに終わった。

屋敷と共に朽ちていくのを待つかのような、兄妹の泉鏡花じみた暮らしぶりを想像してしまう。
二十歳そこそこだった父達は、興味本位で原邸を訪問したのだと思うが、何を感じたのか。
酒を飲むと一度ならずその話をするところを見ると、相当、印象に残る体験だったのだろう。
書記官だったくらいだから、文章を書くのは得意なはずで、その気になれば面白い短編でも書けそうな気もする。
けど、本人にはその気も無いようである。

馬大尽・原家については、飛騨高根観光協会長 小坂 守が書かれた下記の資料が詳しい。
公益社団法人 飛驒法人会だより 「飛騨の木曽馬と馬大尽・原家」


濁河経由で下呂に戻った。
御岳展望台には下界の猛暑を忘れさせる涼風が
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下呂の旅館に戻ると玄関に涼しそうな趣向
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下呂でも36度を超える猛暑日であった。





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by s_space_s | 2018-07-24 17:30 | 旅行 | Comments(0)


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