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2006年 03月 17日

ウォーターメソッドマン

ジョン・アービングの「熊を放つ」に続く第2弾長編小説。
上下2冊に分かれたかなりの分量の本であるが,アービングの他の作品同様面白さに釣り込まれ一気に読んでしまった。



何事も最後まで成し遂げることができない「水療法の男」トランパー。28歳。
尿道が細くて曲がりくねっているので,尿の通りが悪く性交するたびに感染症に罹ってしまう。水療法とは大量の水を飲んで尿道を洗い流すのである。結局は手術することになるのであるが・・・

1回目はウィーンで知り合ったスキーのオリンピック選手ビギー(デカ子ちゃん)とできちゃった婚をするも浮気未遂事件から家出することとなる。2回目は子供を欲しがる同棲相手トゥルペンからも逃げ出す。トランパーには人生の目標と言えるものはないし,考えるのは子供のようなことばかりである(まるで誰かのよう)。だいたいの事件はアービング独特の節回しでエスカレートしていき,最後はドタバタで終わるのである。ところが,ユーモアとペーソスの味付けによって読者はトランパーを好きになってしまうのだ。

「すべてに中途半端な生き方をしているトランパーだが,水療法をやめ思い切ってペニスの手術をしたあと徐々にだが前向きに生きようとし始める。少しずつ世界と折り合いをつけようとする。父親とも和解し,大学の職探しも始める。勝手に自分の子どもを産んだトゥルペンのことも,親友クースとの生活を始めた妻ビギーのことも受け入れようとする。
社会的なことから逃れようとしていたトランパーが最後に父親として世界に立ち向かおうとする人間に変わりつつあることを予感させて物語りは終わる。」
これは,訳者の一人である川本三郎のあとがきからの引用である。うまく纏めてある(あたりまえか?)。

最後のシーンではトランパー家の古い別荘に感謝祭を祝うべく,トランパー,トゥルペン,その赤ん坊メリル(これはトランパーの亡き親友の名前でもある),ビギー,クース,トランパーとビギーの息子コルム,ビギーとクースの赤ん坊アンナ,友人ラルフ・パッカーとこれも妊娠中の妻マーチェ,犬2匹は一同に集まり,さながらカーテンコールの様相を呈する。このイベントもトランパーの子供じみたアイデアから生まれたものである。訳者川本はあとがきでこの部分が大変好きである旨を書いている。最後はめでたしめでたしのようでもある・・・

自分としては,ビギー,トゥルペンにとってもクースにとってもこの馬鹿騒ぎはあまり楽しいものではないように思える。人間の感情はそんなに単純ではないのだ。

by s_space_s | 2006-03-17 23:53 | 読書 | Comments(0)


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