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blog版 がおろ亭

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2007年 05月 05日

山月記・李陵

中島敦(1909~1942)の作品集。
「山月記」は国語の教科書に載ったのを読んだことがあるような,ないような。
自意識過剰から志半ばで夢破れた詩人が虎に変身してしまい,たまたま通りかかった旧友に再開するというお話は,憶えがある方もみえるのではないか。

漢文に題材をとったもの,南洋の島々での経験を綴ったもの,また哲学的な思索から生じた作品の3つの趣向の異なる作品群に分かれるが,「山月記」や「李陵」などの第一群のものがやはり中島敦の真骨頂ともいうべきものであり,素晴らしい。文章に古典的なリズムがあり,現代の作家が真似できないものだ。

南洋物も島々の風物が興味深く描かれていて,太陽が照りつけていながら寂しげな雰囲気が好きだ。

文学的な価値を評論することは私には無理だが,中島敦の作品を楽しめることは私にとって幸福の一言である。

岩波文庫

by s_space_s | 2007-05-05 22:36 | 読書 | Comments(0)


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