2008年 12月 10日
11月29日~12月1日で第2回のペンギンセンサス旅行に行ってきました。 今回も天候とメンバーに恵まれ予定どおり調査を実施することができました。 2日目にはセンサス終了後、袋浦の東にあるすごく目立つピラミッド状の195mピークにも登ることができました。 1日目 昭和基地~ルンパ、シガーレン、イットレホブデホルメン~ラング雪鳥沢小屋 まずルンパに上陸。 今回は個体数ではなく営巣数、抱卵数の調査をしました。 産卵したメスが餌を食べに出ているので、数が半分になり、オスは各巣にバラけて抱卵して動かないので数えやすかったです。 産卵するとメスは2週間ぐらい戻らず、その間、オスが卵を温めます。 メスが帰ってくると2、3日交替で餌を食べに行くそうです。 それが2週間ぐらい続き卵が孵ります。 落ち着いたたたずまい。 立ってうろうろしているのにはペアリングできなかったオスが多い。 いまだに石を探しては自分の巣に運んでいるのもいます。 抱卵しているオスのそばを歩くとつつかれまくり。 これは前回(11日前)に上の写真の奥に写っているルッカリーを撮ったものですが、雰囲気の違いが分かると思います。 2個抱卵していることも多いけど、雛として育てられるのは1羽だけ。 営巣数のカウントはペンギンがいる巣を数えるのでわかりやすい。 抱卵数は、ペンギンが寝ているか、立っていても足の間に卵が確認できるものを数えます。 実際は非抱卵数(立っていて足のあいだに卵がなさそうなやつ)を数えて営巣数から引き算します。 ルンパの一番大きいルッカリー。 ここは写真によるカウントなのでまだ結果は聞いていません。700ぐらいでしょうか。 前回のペンギンセンサスで発見された新しいルッカリーにも1つ巣がありました。 バックはお馴染みのラングの山並み。 ペンギンは巣を汚さないように糞を周りに飛ばすのですが、この模様が好きです。 色と広がり具合がいいデザインに見えます。 ルート途中のシガーレンのルッカリーは今回も時間短縮のため、Hドクとわしだけでスノモで行って見てきました。 7つ営巣しているのに抱卵数が3しかなく、過疎のルッカリーでは産卵に成功する確率も低いのかなと思いました。 やっぱり住むならルンパみたいな都会? 次はイットレホブデホルメン。 前回と同様、2班に分かれて行動しました。 わしは気象のM隊員と二人で、前回見つけにくかった3羽のルッカリーを見に行きました。 上陸地点には海氷が融けたり海水がクラックから浸み出したパドルという水たまりが増えていました。 資料の地図とGPSデータを比べてみたら170mほど位置がずれていました。 地図の場所で見つからないはずです。 2つ営巣があり1つ抱卵でした。 ちょんがーのオスは寂しそう。 今日の調査はここまで。 ラングの雪鳥沢小屋に入りました。 49次隊がこの小屋を使うのは今回が最後です。 2日目 雪鳥沢小屋~水くぐり浦~袋浦~東の195mピーク~袋浦~雪鳥沢小屋 水くぐり浦の立派な成鳥。 雌雄の見分け方はよくわかりません。 今の時期にルッカリーにいるのはたぶんオス。 普段丸い頭が角刈りの兄ちゃんみたいになるのは、緊張しているサインだそうです。 足のアップ。 足で移動することが多いだけに丈夫そうな足です。 死んだ個体の足の裏を観察しましたが、鱗状になっていて爬虫類の足にそっくりです。 こっちは袋浦のルッカリー。 170ぐらいでちょうど数えやすいサイズ。 午前中に調査が済んだので、雪上車でゆっくり昼食を摂ったあと、裏の顕著な三角ピークに出かけました。 これは、反対の雪鳥沢小屋から夏に見た景色です。 左手のとんがったのが195mピーク、右手の高いのが長頭山です。 取りつきのあけび池の峠まで思ったより遠かった。 峠からちょっと急な岩場を一段上がると、登りやすい一枚岩の尾根になりました。 特に困難な場所はありませんが、両脇が切れているので、高度感ばっちり。 股のあたりがムズムズします。 ガレの多い痩せ尾根を慎重に登り、手前のピークに着きました。 全員でバンザ~イ。右に見えているのは、ハムナ氷瀑です。 せっかくなので少し奥の地図の195m標高点まで行ってみました。 大陸方面の景色はこちらのほうが素晴らしかった。 東に見えるずっと気になっていた二子山。 もう登ることはないでしょう。 帰りは袋浦を横断して帰りました。 ツルツルの裸氷に転倒者続出。 雪上車を暖気している時間にアプリコットケーキでティータイム。 小屋に帰る途中で、山の頂上から見たハムナ氷瀑に寄り道しました。 3日目 雪鳥沢小屋~豆島~オングルカルベン~昭和基地 小屋出発の時点で昭和基地の気象から風が25m/sぐらい吹いて、雪が降るかも知れないという予報が出ました。 既に風はかなり吹いていたけど、視界は確保されていたので出発しました。 この判断は毎回難しい。 慎重に行くなら小屋にもう1泊でもおかしくないでしょう。 予報どおり昼ごろに風がさらに強くなり、地吹雪になりました。 隊長の指示で旅行中ずっとスノモで先行しパイロットしましたが、地吹雪のときは視線が高い雪上車のほうが視程がわりと利いてナビしやすいようです。 わしがルートを見つけるのにかなり苦労していたのに、雪上車に乗っていたメンバーはそれほど危険を感じなかったそうです。 強風時に発生する吊るし雲 ルート脇にあったアザラシの穴を覗いていたら、アザラシがガバッと出てきて、双方びっくり。 背に腹はかえられず鼻だけ出して息してました。 豆島のルッカリーでの出来事。 メンバーが見ていた巣から卵が転がり落ちました。 状況は分からないのですが、どうやら巣にいたオスが自分で突きだしたらしい。 ひょっとすると放棄された巣を乗っ取ったのかも。 卵が巣から転げ出るとオオトウゾクカモメが数羽寄ってきました。 センサスのメンバーの目の前、さっきのペンギンも威嚇したにも関わらず、1羽のトウガモが大きな卵をくちばしに銜えてさっと飛び去ってしまいました。 そのメンバーはショックを受けているようで気の毒になりました。 卵がなくなっても巣に石を運ぶ件のオス 一時ヒヤッとした天候もそれ以上悪化せず、隣のオングルカルベンの調査を済ませ、昭和基地に4時半に無事帰還。
by s_space_s
| 2008-12-10 13:41
| 南極
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Comments(7)
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アメフラシ
at 2008-12-14 23:29
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いつも更新を楽しみにしています。今週Yさんと二人で黄蓮谷へ行ってきました。明るく開けた谷の中に降りると、大きな山に囲まれて自分も小さな動物の一つなんだなあと感じます。Yさんとはもっぱら、イシギワさん帰ってきたら飲み会やろうね、という話題です。覚悟しておいてください!
追伸:私もイシギワさんに怒鳴られたことがあります。普段愉快なだけに、ショックなのよね~。まあストレートなのできついけど、気にしないでね、メンバーの方。
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s_space_s at 2008-12-15 02:17
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バタ子
at 2008-12-15 09:12
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こんにちわ。
今回も聞いてみたいことがいくつかあります。 >産卵するとメスは2週間ぐらい戻らず、その間、オスが卵を温めます。 メスは2週間もどこへ行っているのでしょうか? エサ探しですか? 近所を日帰りでエサ探しではないのでしょうか? 生まれですぐに授乳とかないので、長期外出可能なんですね。 なんだか羨ましいです。 ペンギンの巣周辺は、養鶏場の臭いがするものでしょうか? 寒いので臭わない? 私も同じく、岩場で山岳会のキタムラさんに怒鳴られましたよ。 お陰でそのピッチ登れました。感謝。
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gaoro
at 2008-12-15 13:35
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メスは餌を探しに行っているのだと思います。
確かめたわけではないですが、産卵の時期(11月19日前後がピーク)にはルッカリー周辺ではまだ海氷が安定していて、海に潜れるような場所があまりないような気がします。 それでかなり遠くまで行っているのではないかと思います。 そして2週間して帰ってきたころには2日ぐらいで行ける餌場が確保できるので2,3日交替で抱卵するのではないでしょうか。 雛が孵ったとき近場の餌場がないと生存率が2割もなくなってしまうらしいです。 ペンギンのルッカリーはまさしく養鶏場または小鳥屋さんの匂いでいっぱいです。 プラス雛や成長の死骸がゴロゴロしています。 その匂いも混ざって、かなりのものだと思います。
がおら亭、たどり着きました!
峠の親父さんの話を思い出しつつ、 げえらだったか、がえろだったか・・・・と。 「石際淳さん」で調べれば早かった・・・ 昨日は「南極報告会」に参加させていただきありがとうございました。 アデリーペンギンの足跡(はい跡)が気になりました。 「替え歌」にはたどり着いたのですが、今日のところはたどり着けず・・・ ボチボチ楽しみながら探ります。 娘は、「そういえば、卒業前、ゼミの教授から「南極観測の・・・」話聴いた気がする・・・」なんて言ってました。 3月までお世話になっていたのに、しっかり挨拶もさせずに申し訳ありませんでした。 そこそこ酔っていたということで、お許しを・・・ おいしい氷の入ったお酒。ご馳走様でした。
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s_space_s at 2009-06-29 18:56
プ・プ・プ・・・・
そうでした。「家庭円満の秘訣」なるほど、そういうことですねぇ。 ペンギンに学ぶことも大ですねぇ。 翌日は、娘への1泊の恩ということで、朝食ならびにおかずをちょこっと作ってから、可児市で開催された 絵本作家・市居みか 原画展&ワークショップ に参加し、童心に返って楽しみました。 うわぁ、「今後ともよろしく」なんて、嬉しいお言葉ありがとうございます。 こちらこそ、よろしくお願いいたします。 |
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コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ ― 井伏鱒二訳詩「勧酒」原詩(五言絶句)于武陵 ― by gaoro 検索
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